フィジカルAIの時代

9月に入って、ロボット学会の講演会、ROSCONなどに参加してきたが、各方面ではフィジカルAIの話題が花盛りであった。
特にロボット学会の特別講演において、早稲田の尾形先生が昨今のフィジカルAIの状況を産業面、学問、そして哲学的視点も含め
解説されてとても有意義であった。尾形先生といえば早稲田の加藤研ご出身とのことで、当時はつくば万博でのピアノ演奏をはじめ、
加藤研の人型ロボットといえばホンダのアシモの先駆けとして、日本の技術の象徴のようであった。

尾形先生の「ディープラーニングがロボットを変える」という著作は2017年に書かれ、その時の私のアマゾンのページを見ると
7月下旬の出版に対し、同年の8月初旬には購入をしている。2015年の東大松尾先生の「人工知能は人間を超えるか」を始め、これからのAIの動向を読み解く良書がいくつかあったが、学生時代にニューラルネットワークに少しく触れたものとして、誤差逆伝播の発見が肝である、という点が深く記憶にのこっている。尾形先生が当時から深層学習とロボットの身体性についてふれていたのは、現在のフィジカルAIにつながる先見性のある視点だ。

一方先生も述べておられたし、また制御工学の足立修一先生も「制御工学のこころ」シリーズで言及されるように、もともとAIとロボット
の領域は扱う概念が違いその間には深い溝があったという(そうした距離感を意識されて書かれているところにもこのシリーズは白眉におもうが)。AIの人はROSなど聞いたこともないとういう話も耳にする。しかしここのところの模倣学習や基盤モデルの発展に伴い、AIの領域の方がかなりロボットの分野にはいられているのを実感する。

 社内では工業分野での制御系を専門にしている視点からか、AIや深層学習の曖昧性についてはいまだに厳しい見方も多いが、早晩活用についての議論は必然になると思う。当社では、数年前に埼玉大学の辻先生の模倣学習の研究に関連して、ハードウェアを一部提供した経緯がある。当時国内のハードウェアは軒並みクローズ設計になっており、先生からはさまざまなアイデアをいただいた。  そんななかで、ことしの前半にフランスのLebobotのSO-100というオープンハードの廉価なロボットがだされたことは、LLMをいじっていたときにも多用したHuggingFace社であったこともあり、その流れに注目した。ことしの連休にはロボットを使用したハッカソンがあったようだが、私自身は中国のサイトから部品を購入して組み立てしているところ、なかなかこつが掴めず、何度もバラして随分時間がかかった。その後ネット上や
秋葉原のロボスタディオンなどで、情報共有のお世話にもなり、模倣学習にようやく挑戦することができるようになった。 また、こうした
動作生成AIモデルや基盤モデルについて、拡散モデル、フローマッチングの理論やそれぞれのモデルの解説などを、すうがくぶんかさん、松尾研のコミュニティ、そして 九州のベンチャー企業の方が手弁当でやっているオンラインの集まりなどで少しく学びを深めているが、技術の進歩はあまりにも早い。 特に基盤モデルは昨今は先ほどの尾形先生、トヨタ自動車あるいは産総研などを中心として、ロボットにおけるChatGPTに相当するデータ収集について、おもに家庭環境などを中心にすすめられているが、相当の部分で産業にも応用できる領域はあるのではないかと思う。スピードの面での課題もあるが、バイリテラル制御では筑波の堺野先生や先の埼玉大学の辻先生などもモデル面や通信面などからもリアルタイム性を追求した研究がすすめられている。またオープンハードウェアの動きもタイムリーな著書をだされた東大の河原塚先生をはじめ、OpenArm.も(以前から秋葉原で実機を拝見する機会もあったが)いよいよ本格的にリリースされる方向にもなってきている。 
 人手不足だけでなく、昨今は研究分野やライフサイエンスなど、人間がつかいこなす自動化という側面からの新たな自動化領域も増えてくるだろう。ロボットは中国、米国におさえられている感もあるが、ソフトウェアとハードウェアの最適化においては、とくにファインチューニングの観点から我が国には一日の長もあるだろう。 日本の半導体立国の盛衰を経験したものとして、こうした分野でもう一度我が国が
新たな産業分野をきりひらいていけるのではないだろいうか。当社もこうした分野には注目をしつつ、より高度な自動化サービスの提供
により「お客様の現場に進化をもらたす」べく精進していきたいと考えている。