エフェクチュエーションという考え方

最近、立命館の吉田満梨准教授の動画から、エフェクチュエーションという考え方を知りました。海外ではすでに何年も前から知られていたようですが、この理論を確立したサラスバシー教授は本年のGlobal award for entrepreneurship research(起業家研究におけるグローバル賞)を受賞されたとのことで、これからさらに知名度が上がってくるように思います。

 これは、成功した企業家がどのような意思決定をしているかを、企業家の協力の元、架空のケースでの実証実験から、法則性をパターン的な行動をとっているという発見でした。私が印象的に思ったのは、従来は将来のビジョンや市場イメージからバックキャストしてくるのが企業家の行動と思われていますが、実際の成功している企業家は「自分が何者」であり、「今、自分が何をもっているか」そして「誰を知っているか」という非常に現実的な問いからスタートしていたという点に着目したことです。

その昔、造船業や鉄鋼業が停滞期を迎える中で、新規事業を立ち上げるために、かなりいろいろな業種への展開が図られましたが、もともとの事業とは距離感のある事業展開が企画されたことが多かったように思います。稲盛和夫が「飛び石をするな」と言ったように、こうした米国の企業家はむしろ、どうやったらリスクを減らすことができるか、という手堅いところがあることも合理的な気もします。

 またソニーの井深氏と盛田氏ではないが、パッチワークを創るようにできるだけ多くのパートナーと協力関係をつくること、またドラッカーの「予期せぬ成功」のように、うまくいかなかったという偶然性を活かすといった考えもあることも興味深く思います。

 私自身の体験としても、新しいお客様や技術の開発は、決して計画を描いてストレートにすすんだわけでなく、こうした偶発性とネットワークにもとづくプロセスを地道におっていくときに起こることがあるということを実感します。

 よく、経営学というのは、あたりまえのことが多い、といわれることがありますが、私自身としては、無自覚になっている仕事上の体験を、俯瞰した形で再整理してくれるものという気がしますし、またこうした理論では、特別な企業家がもつ能力ではなく、ある程度普遍的に習得できるプロセスであるといわれることにも勇気づけられる思いがします。

 夢を追いつつも、自らが何者であるかを問うことから始まるというエフェクチュエーションという考え方に大いなる可能性を感じました。

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