泳ぎを楽しむ(2)
(承前)トレーニングの場で特徴的だったのは、必ず陸上での練習があったことだ。水泳というと水中練習が普通だが、陸上でできない動作は水中でもできないから、という理由で「ドライランド」の練習があった。こうした動作を動画撮影すると自分の動きのぎこちなさがよくわかる。ゴルフ好きの方が待ち合わせなどでスイングの練習をしていることを見かけることがあるが、私も腕の動かし方などを無意識に練習して
しまうこともあった。
ビデオといえば、レッスンの前後でビデオ撮影を行い、その動作の変化に対してコメントをもらうのも有益だった。特に水中でどんな動作をしているのかを自覚することはむずかしいし、さらに水上での動きはほぼ分からない。こうした動画を練習後に見てみるのも参考になることが多かった。
それでもなかなか上達しないこともあり、今は無くなってしまった船堀にある循環プールでのレッスンを
うけたこともあった。循環プールとは、モータで水流をつくりがら固定した位置でおよぐもので、最近は
こうした設備をつかって指導をする施設も増えてきているようだ。
当時は船堀には数名の先生がおられて、それぞれ個性がちがい教えていただけるポイントも異なって
いたのがよかった。水流の中で、4方向カメラで泳ぎを撮影してもらいビデオ分析をするのだが、水流
をつくっていることもあり、プールで泳ぐ以上に自分の癖が強調される。ここでも先生の動画と自分の
動作のギャップにショックをうけつつ、地元のプールで練習に励んだものだった。
船堀には当時、ジャズピアニストO氏がきているという話もある先生から聞くこともあった。もともと
華々しいデビューを飾って私もライブやCDでよく聞いていた人だったので、意外ではあったが、そうした
話題もなんとなく練習のモチベーションになった。
テンポトレーナーをつかうのも指導の特徴である。これは防水性のあるちいさなメトロノームのような
もので、コンマ秒単位で音がでる。これをキャップの中にいれて、音に合わせて手足の動作をすることで
一定のリズムが保たれると同時に、テンポを速くすれば当然スピードもでる形になる。つまり、ひと搔きの距離(ストローク)と一回にかかる時間(テンポ)のかけ算を調整することで、トータルのスピードを調整できることになる。また遅いテンポで動作を修正し、その状態でテンポを徐々にあげていくなど、ひとりで
行う練習にもテンポトレーナーをつかうことで練習にメリハリもでてくる。
マラソンのようなスポーツはトレーニングによる筋力、持久力が中心となると思うが、水泳はフォームを
改善することで、同じ体力でもスピードが明確に改善されるところにその特徴があるだろう。こうした
ツールをつかった練習方法にも、大人のための水泳という考え方が現れているように思う。(つづく)