言葉の重さ

新卒採用のプロジェクトを現在進めていますが、そのプロセスで「どんな人材を採用したいか」というコンセプト作りを行うことになりました。社内の皆さんにアンケートなどに協力していただきながら、「あなたの夢中が未来を変える~Change the Factories~」というコンセプトにたどり着きました。

 こうしたコンセプトの言葉づくりというのは、できたものをみてしまうとそんなものかと思うところもあるのですが、重要なのは、メンバー同士でそうした言葉を作り上げていく過程にあるように思います。

 スコラの柴田さんの新刊「日本的勤勉のワナ」には、そうした社内変革のオフサイトを通じた共通言語を作り上げるという現在進行形の企業様の例がいくつかとりあげられています。例えばある大企業グループの子会社で、今後独立経営をめざすという中で、経営人がつくりあげたコンセプトに「業績と社員の幸福の両立をあきらめない」というようなものがありました。これはこの会社の方から直接そうしたプロセス作りのお話しを聞くことがあったのですが、2週間に一度、半日以上かけて経営陣が話合いをかさね、こうした言葉に到達したといいます。

 例えばトップが一人でかんがえると、それでも「業績と社員の幸福の両立をめざす」というところまではたどり着くと思うのですが、「あきらめない」という言葉にはなかなかたどり着けないと思うのです。こうした言葉の裏には、そうした理想と現実の葛藤をかかえるような議論と対話の流れがみえてくるように思います。

 よく、同じ言葉や単語でも、その言葉の定義や意味の解釈に社内で差がうまれ、そうしたちょっとした統一感のなさが、結果として現場の戦略における方向のずれを大きく生むものだ、という話を聞くこともあります。私も採用コンセプトという言葉を簡単につかいましたが、実はそのコンセプトとは採用選考の基準なのか、現在の社員に向けたメッセージなのか、はたまた未来の企業の姿なのか、などメンバーとも少しく議論した経緯もありました。

 こうした議論は、一見時間のロスのような感じもしますし、早く結論を導きたいという誘惑にも駆られますが、それこそ先の企業の例のように、数十時間におよぶ真剣勝負の対話が、その企業の変革の軸を決めるということ、人間にとっての言葉とはそれほど思い物だということを柴田さんも新刊で強調したかったのではないかと思うのです。

 当社も平成元年に「メカトロニクスの興電舎」という(これは安川電機さんの造語ですが)言葉を決めてから、その業態が大きく変化をしたことを振り返ると、そうした言葉の持つ力の大きさというものに改めて驚愕をする思いです。そしてそうした業態転換に一つの区切りを感じる今だからこそ、新たなベクトルとなりうる言葉を再構築する段階にあるように感じています。